私が社会人一年目の総務部に配属されたばかりの頃、今思い出しても顔から火が出るような、大きな失敗を犯したことがあります。それは、ある部長の奥様が亡くなられた際の、供花の手配での出来事でした。当時の私は、まだ右も左も分からず、上司から「〇〇部長の奥様が亡くなられたから、会社として供花の手配をしておいて」と、簡単な指示を受けただけでした。私は、マニュアルを片手に、まずは葬儀が行われる斎場を調べ、次に、いつも会社で利用している近所の生花店に、電話で注文を入れました。「株式会社〇〇の名前で、お悔やみのお花を一つお願いします」。今思えば、この時点で、私の失敗は始まっていたのです。電話を切った後、私は一つの疑問に気づきました。「あれ、お葬式の宗教って、確認しなくてよかったのかな?」。不安になった私は、上司に恐る恐る尋ねました。すると、上司は呆れた顔でこう言ったのです。「君は、葬儀社に連絡したのか?」「いえ、いつもの花屋さんに…」「馬鹿者!葬儀の花は、全体の統一感を出すために、葬儀社が一括で取りまとめているのが普通なんだ。勝手に別の花屋から持ち込んだら、ご遺族や葬儀社に迷惑がかかるだろう!」。私は、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。慌てて生花店にキャンセルの電話を入れ、次に、葬儀社の連絡先を部長に確認し、改めて注文を入れ直しました。葬儀社の担当の方は、非常に丁寧に対応してくれましたが、その電話口の向こうで、私がどれほど無知で非常識な担当者だと思われたことか。さらに、その電話で「宗教は仏式ですか、キリスト教式ですか」と尋ねられ、私はまたも言葉に詰まりました。結局、再度部長に確認する羽目に。たった一本の供花を手配するのに、私は一体どれだけ多くの人に迷惑をかけてしまったのでしょうか。この経験は、私にとって苦い教訓となりました。仕事とは、ただ言われたことをこなすのではなく、その背景にある慣習や、関係者への配-慮を想像する力が必要なのだと。そして、分からないことは、自分で勝手に判断せず、必ず確認すること。あの日の失敗がなければ、私は今も、葬儀の花を近所の花屋に頼むような、恥ずかしい社員のままだったかもしれません。