近年、葬儀の主流となりつつある「家族葬」。ごく近しい身内だけで故人様を心静かに見送るこの形式は、一般葬と比べてどのような時間の流れで進められるのでしょうか。儀式の内容自体は伝統的な葬儀と大きく変わりませんが、時間の使い方には家族葬ならではの特徴があります。ここでは、二日間にわたって執り行われる、最も一般的な家族葬のタイムスケジュールをご紹介します。まず一日目は「お通夜」です。ご遺族や親族は、式の始まる二時間から三時間前、おおむね午後三時から四時頃には斎場に入ります。そこで葬儀社の担当者と祭壇の設営や返礼品の確認といった最終的な打ち合わせを行い、宗教者への挨拶などを済ませます。一般葬と大きく異なるのは、ここからの時間の使い方です。家族葬では、参列者が限定されているため、ひっきりなしに訪れる一般弔問客への対応に追われることがありません。そのため、式の開始までの時間を、故人様のそばで、家族水入らずで静かに過ごすことができます。午後六時頃、定刻になると通夜式が始まります。読経と焼香が中心となり、一時間程度で閉式となります。その後、「通夜振る舞い」の席が設けられますが、これも身内だけのアットホームな雰囲気の中で、故人様の思い出を語り合いながら食事を共にする、温かい時間となります。翌日は「葬儀・告別式」です。ご遺族は朝九時頃に斎場へ集合し、準備を始めます。午前十時頃から告別式が開式となり、読経や焼香、そして故人様との最後のお別れである「お花入れの儀」へと進みます。ここでも、一般会葬者がいない分、一人ひとりが時間をかけて、ゆっくりと棺にお花を手向け、最後の言葉をかけることができます。その後、出棺し、火葬場へと向かいます。火葬、収骨を終え、斎場に戻って繰り上げの初七日法要と「精進落とし」の会食を行うという流れは一般葬と同様ですが、すべての儀式が終了するのは、午後三時から四時頃が目安です。家族葬のタイムスケジュールは、儀式そのものの時間よりも、弔問対応に割く時間が圧倒的に少ないのが特徴です。その結果生まれた心の余裕と静かな時間が、故人様と深く向き合うための、かけがえのない価値となるのです。