自分らしい最期を演出し、残された家族の負担を軽減できる「葬儀の生前予約」。多くのメリットがある一方で、その契約には、事前に知っておくべきいくつかの注意点やリスクも存在します。後悔しない選択をするために、契約前のチェックポイントをしっかりと押さえておきましょう。まず、最も重要なのが「契約した葬儀会社の倒産リスク」です。葬儀は、いつ執り行われるか分かりません。数十年後に、契約した会社が存続しているという保証はどこにもないのです。もし、葬儀費用を前払金として支払っていた場合、会社が倒産してしまうと、そのお金が返ってこない可能性があります。このリスクを回避するためには、支払い方法をよく確認することが大切です。全額前払いではなく、入会金などの少額の支払いで会員登録ができ、葬儀費用は実際に執り行った後に支払う、という形式の会社を選ぶのが比較的安全です。もし、積立金方式の互助会などを利用する場合は、その運営母体がしっかりしているか、また、万が一の際の保全措置がどのようになっているかを、契約書で詳細に確認する必要があります。次に、「年月が経つことによる心境や状況の変化」も考慮しなければなりません。契約時には「盛大な一般葬で」と考えていても、数十年後には、親しい友人も少なくなり「静かな家族葬で」と心境が変化するかもしれません。あるいは、引っ越しによって、契約した葬儀会社の対応エリア外に住むことになる可能性もあります。このような変化に対応できるよう、契約内容の変更や、解約が柔軟に行えるかどうか、そして解約する際の返戻金の条件などを、事前に必ず確認しておきましょう。そして、何よりも大切なのが「家族の理解と同意を得ておく」ことです。いくら本人が良かれと思って契約しても、その存在を家族が知らなければ、何の意味もありません。いざという時に、別の葬儀社に依頼してしまう、という悲劇も起こり得ます。契約した葬儀会社の連絡先や契約内容を、エンディングノートなどに分かりやすく記し、複数の家族にその場所を伝えておくことが不可欠です。「自分の葬儀は、この会社にお願いしてあるからね」と、日頃から家族とコミュニケーションを取り、意思を共有しておく。そのプロセスこそが、生前予約を本当に意味のあるものにするための、最も重要な鍵となるのです。