葬儀の日程を決める上で、ご遺族の希望や宗教者の都合など、様々な要素を考慮する必要がありますが、それら全てに優先する、絶対的な制約条件があります。それが「火葬場の予約」です。火葬場の予約が取れない限り、葬儀のタイムスケジュールは一切組むことができません。そして、この火葬場の予約が、特に都市部において、近年非常に困難な状況になっているという現実を、私たちは知っておく必要があります。なぜ、火葬場の予約はこれほどまでに混み合うのでしょうか。その最大の理由は、高齢化による死亡者数の増加に対し、火葬場の建設が追いついていない、という社会構造の問題があります。火葬場は、その性質上、新たに建設することに対して地域住民の理解を得るのが難しく、その数は慢性的に不足しているのです。この慢性的な混雑に拍車をかけるのが、日本の文化に根付いた「友引」の慣習です。多くの火葬場は、友引を休業日としています。そのため、友引とその前日に亡くなった方々の火葬が、すべて友引の翌日に集中することになります。この「友引明け」の日は、予約が殺到し、瞬く間に埋まってしまいます。同様の現象は、年末年始やゴールデンウィークといった大型連休の前後にも起こります。その結果、亡くなられてから火葬まで、数日間から、ひどい場合には一週間以上も待たなければならない「待機」という状態が発生します。この待機期間中、ご遺体はご自宅か、葬儀社の専用安置施設で、ドライアイスなどを用いて適切な保全処置を施しながら安置されることになります。ご遺族にとっては、故人と過ごす時間が増えるという側面もありますが、同時に、ご遺体の状態が変化していくことへの不安や、安置費用が日数分加算されていくという経済的な負担、そして何より、お別れの日がなかなか確定しないという精神的なストレスは計り知れません。葬儀の予約とは、まずこの厳しい火葬場の予約状況という現実と向き合うことから始まります。希望通りの日程でお見送りができるとは限らない。そのことをあらかじめ理解しておくことが、いざという時の心の準備となるのです。
最優先事項である火葬場の予約の現実