社員やその家族に不幸があった際、会社としての弔意の示し方として、「供花」と「香典」の二つが挙げられます。この時、多くの企業の担当者が悩むのが、「供花と香典は、両方出すべきなのか、それともどちらか一方で良いのか」という問題です。これは、会社の慶弔規定や、故人との関係性によって対応が変わる、非常にデリケートな判断が求められる場面です。結論から言えば、特に重要な取引先や、自社の役員・社員本人が亡くなった場合など、非常に丁寧な弔意を示したい場合には、「供花と香典の両方を出す」のが最も正式な対応とされています。祭壇を飾る花で視覚的に弔意を示し、同時に、香典という形でご遺族の経済的な負担を支える。この二つを併せて行うことで、会社として最大限の敬意とサポートの姿勢を表現することができます。一方で、社員の家族(例えば、配偶者や両親)が亡くなった場合は、会社の福利厚生という側面が強くなるため、対応は企業によって様々です。慶弔規定で「供花と香典の両方を出す」と定められている会社もあれば、「どちらか一方を選択する」としている会社、あるいは「役職に応じて、部長以上は両方、一般社員は香典のみ」といったように、細かくルールを定めている会社もあります。もし、明確な規定がない場合は、過去の慣例に倣うのが一般的です。過去に同様のケースで、どのように対応してきたかを確認し、社員間で不公平感が出ないように配慮することが重要です。また、最近増えている家族葬の場合、ご遺族から「香典・供花ともに辞退」の意向が示されることが多くあります。この場合は、もちろん両方とも差し控えるのがマナーです。もし、「香典は辞退するが、供花は受け取る」あるいはその逆の意向が示された場合は、そのご遺族の気持ちを尊重し、申し出のあった方だけを手配します。供花と香典の関係において、絶対的な正解はありません。大切なのは、会社の規定や慣例、そして何よりもご遺族の意向を尊重し、その上で、会社として最も誠実で、心のこもった弔意の形は何かを判断することです。その丁寧な判断プロセスこそが、社員を大切にする企業の姿勢を物語るのです。