家族葬を執り行う際、私たちはどうしても、通夜や告別式といった「儀式当日のタイムスケジュール」にばかり意識が向きがちです。しかし、後悔のないお別れを実現するためには、葬儀が終わった後の「時間」についても、あらかじめ考えておくことが、実は非常に重要になります。特に、家族葬という選択が、葬儀後のご遺族の時間の使い方に、どのような影響を与えるかを理解しておく必要があります。家族葬の大きな特徴は、参列者を限定することです。そのため、故人と親交はあったものの、葬儀に呼ばれなかった多くの方々が、後になって訃報を知ることになります。そうした方々の中には、「せめて、お線香だけでもあげさせてほしい」と、葬儀後にご自宅へ個別に弔問に訪れたい、と考える方も少なくありません。ご遺族としては、そのお気持ちは大変ありがたいものですが、葬儀後、四十九日が過ぎるまでの週末などが、毎週のように弔問客の対応で埋まってしまう、という事態も起こり得ます。これは、深い悲しみの中で、心身を休めたいご遺族にとって、新たな負担となりかねません。この「葬儀後の時間」の負担を軽減するために、計画段階でできることがいくつかあります。一つは、葬儀が終わった後、できるだけ早いタイミングで、関係者各位に「事後報告の挨拶状」を送付することです。その文面に、「誠に勝手ながら、弔問ならびに香典は固くご辞退申し上げます」という一文を添えることで、個別弔問を希望される方々を、ある程度コントロールすることができます。もう一つの方法は、あえて「弔問期間」を設けるというものです。挨拶状に、「なお、ご弔問につきましては、〇月〇日の午後一時から五時まで、自宅にてお受けいたします」といったように、ご遺族の都合の良い日時を指定し、弔問客をその時間に集約させるのです。これにより、ご遺族は対応の準備を計画的に進めることができ、それ以外の時間は、心穏やかに過ごすことができます。家族葬は、儀式当日の時間を、家族だけの静かなものにしてくれます。しかし、その分、故人が築いてきた社会との繋がりが、葬儀後の時間に凝縮されて現れる可能性があるのです。そのことを見越して、葬儀後のタイムマネジメントまで含めた、広い視野での計画を立てること。それが、現代における、賢明な家族葬の進め方と言えるでしょう。
葬儀後の時間も考えた家族葬計画