伝統的な一般葬のタイムスケジュールは、多くの場合、午前中に告別式、午後一番に火葬、というように、ある程度決まった型にはめられています。これは、不特定多数の一般弔問客の都合や、斎場・火葬場の運営時間に合わせる必要があるためです。しかし、参列者がごく近しい身内に限定される「家族葬」では、この時間的な制約から解放され、より自由で、ご遺族の希望に沿った柔軟なタイムスケジュールを組むことが可能になります。例えば、一般葬では考えにくい「午後の告別式」も、家族葬であれば実現可能です。遠方に住む親族が、当日、朝一番の新幹線や飛行機で駆けつける場合、午前中の告別式では間に合わない、というケースは少なくありません。そんな時、家族葬であれば、告別式の開式を午後一時や二時に設定することができます。これにより、遠方の親族も前泊することなく、当日の移動で参列することが可能になり、その負担を大きく軽減できます。また、故人様の生前のライフスタイルに合わせて、ユニークな時間設定をすることもできます。例えば、夜の仕事をしていた故人のために、通夜を昼間に行い、告別式を夕刻から行う「昼通夜・夜告別式」といった形も、家族葬ならではの選択肢です。あるいは、儀式そのものの時間配分を、自由にデザインすることも可能です。通常の告別式では、読経や焼香といった儀式が中心となり、故人を偲ぶ時間は限られています。しかし、家族葬であれば、儀式の時間を少し短縮し、その分、故人が好きだった音楽をみんなで聴く時間や、思い出の写真をスライドショーで上映する時間を、たっぷりと設けることができます。お花入れの儀でも、時間に追われることなく、一人ひとりがゆっくりと故人に最後の言葉をかけることができます。このように、家族葬における時間の柔軟性は、単にスケジュールが自由になるというだけではありません。それは、決められた儀式をこなすのではなく、故人様とご遺族にとって、本当に意味のある、心に残るお別れの時間を、自分たちの手で創り上げるための「可能性」そのものなのです。葬儀社の担当者とよく相談し、固定観念にとらわれず、自分たちらしい、最高の時間の使い方を模索してみてはいかがでしょうか。