近年葬儀の主流となりつつある「家族葬」。ごく近しい身内だけで故人を見送るこの形式は、多くのメリットがある一方で、会社関係者にとっては、その対応に苦慮する場面も少なくありません。特に、「社員の家族が家族葬を行うと連絡があったが、会社として供花を贈るべきか」という問題は、多くの企業の総務担当者が直面する、デリケートな課題です-。この問題に正しく対応するための、最も重要な原則は「ご遺族の意向を最優先する」ということです。家族葬を選ぶご遺族の多くは、「静かに、内輪だけで故人を見送りたい」「参列者や関係各位に、余計な気遣いや負担をかけさせたくない」という想いを抱いています。そのため、訃報の連絡と共に、「誠に勝手ながら、ご香典ご供花は固くご辞退申し上げます」と、弔意の表明を辞退する旨を明確に伝えてくるケースが非常に多くあります。この「辞退」の連絡があった場合は、会社として、その意向を厳粛に受け止め、供花や香典を送ることは、絶対に差し控えるべきです。良かれと思って一方的に供花を送ってしまうと、ご遺族は、そのお返しをどうするか、斎場のどこに飾るかなど、新たな気遣いと手間を強いられることになります。それは、静かに故人を見送りたいという、ご遺族の最も大切な願いを踏みにじる行為になりかねません。では、もし訃報の連絡に、供花辞退の明確な一文がなかった場合はどうでしょうか。この場合でも、即座に供花を手配するのは早計です。まずは、社員本人に直接、あるいはご遺族に連絡を取り、「会社として、お花をお贈りしたいと考えているのですが、お受け取りいただけますでしょうか」と、丁寧に意向を確認するのが最も確実な方法です。そこで、もし少しでも迷いや遠慮の様子が見られたら、無理強いはせず、「それでは、お気持ちだけ頂戴いたします」と、潔く引き下がるのがスマートな対応です。会社として社員を思う気持ちは大切ですが、その気持ちの表現方法は、供花だけではありません。後日、落ち着いた頃に、部署のメンバーでお金を出し合い、お悔やみの手紙を添えてお渡しする、といった形も考えられます。家族葬という、ご遺族の繊細な心情が反映されたお別れの形を、会社として深く理解し、尊重する姿勢。それこそが、現代において求められる、真の弔意の示し方と言えるでしょう。
家族葬と会社からの供花の関係