社員やその家族の葬儀に、会社として供花を贈る際には、ご遺族に失礼のないよう、いくつかの基本的なマナーを押さえておく必要があります。良かれと思って手配した花が、かえってご遺族を困らせてしまうことのないよう、担当者はその手順と注意点を正確に理解しておきましょう。まず、訃報を受けたら、最初に行うべきは「ご遺族の意向の確認」です。近年、家族葬など小規模な葬儀が増える中で、「ご香典ご供花は固くご辞退申し上げます」と、香典や供花を一切受け取らないという意向を示されるご遺族が増えています。この意向を無視して一方的に供花を送ることは、最大のタブーです。ご遺族の気持ちを尊重し、辞退されている場合は、供花を送るのを潔く諦め、後日、弔電を打つなどの別の形で弔意を示すのが賢明です。供花の受け入れが可能なことを確認したら、次に「宗教・宗派の確認」を行います。供花に用いる花の種類は、宗教によって異なります。仏式であれば、菊や百合、胡蝶蘭といった白を基調とした花が一般的ですが、キリスト教式の場合は、カーネーションやスプレーマムなど、洋花を用いた生花のアレンジメントが基本となり、名札の形式も異なります。神式の場合も、仏式とは異なる慣習があります。宗教に合わない花を贈ってしまうと、大変失礼にあたります。そして、手配する際には「葬儀を担当している葬儀社に直接依頼する」のが、最も確実でスムーズな方法です。葬儀社に連絡すれば、その葬儀の宗教形式や、祭壇全体のデザインや色合いの統一感を考慮した上で、最適な供花を手配してくれます。近所の生花店などに直接依頼してしまうと、斎場への持ち込みが禁止されていたり、他の供花とのバランスが取れなかったりするトラブルの原因となります。供花の名札の書き方にも、決まったルールがあります。会社名のみを記す場合と、会社名に加えて代表取締役などの役職と氏名を併記する場合があります。一般的には、社員本人が亡くなった場合は役職と氏名を、社員の家族が亡くなった場合は会社名のみ、と使い分けることが多いようです。連名で贈る場合は、役職の高い人から順に右から書きます。これらのマナーを守り、迅速かつ丁寧に対応することが、会社としての品位と、社員への深い思いやりを示すことに繋がるのです。