結婚式の日取りを決める際には、多くの人が「大安」を選ぶように、私たちの生活には「六曜」という暦注が深く根付いています。では、人生の終焉の儀式である葬儀において、この六曜はどのように関わってくるのでしょうか。葬儀の日程を決める上で、多くの人が気にするのは、六曜の中でも特に「友引」です。しかし、それ以外の「大安」や「赤口」といった日は、葬儀に何か影響を与えるのでしょうか。この疑問に答えるためには、まず六曜の成り立ちと、仏教との関係性を理解しておく必要があります。六曜は、もともと中国で時刻の吉凶を占うために使われていたものが、鎌倉時代から室町時代にかけて日本に伝わり、江戸時代に現在のような形で民間に広まったと言われています。その名の通り、「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の六種類が、カレンダー上で順番に繰り返されています。ここで最も重要なのは、この六曜が、仏教や神道といった日本の宗教とは全く無関係の、民間信仰や占いに由来するものである、ということです。仏教の教えの中には、日の吉凶を説くものは一切存在しません。お釈迦様は、日の良し悪しに惑わされることなく、日々を正しく生きることの重要性を説いています。したがって、宗教的な観点から言えば、「大安だから葬儀をしてはいけない」とか「仏滅だから葬儀にふさわしい」といった考え方は、全く根拠のない迷信ということになります。しかし、そうは言っても、私たちの社会には、長年にわたって育まれてきた慣習というものがあります。特に、葬儀という伝統を重んじる儀式においては、たとえ迷信であっても、人々の心に与える影響は無視できません。このコラムシリーズでは、友引をはじめ、大安や赤口といった六曜の一つ一つが、現代の葬儀において、実際にどのように捉えられ、扱われているのかを、その背景と共に詳しく解説していきます。